読書録──『いま、殺りにゆきます』 | 魔法使いの赤い城

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読書録──『いま、殺りにゆきます』

アメブロ「○○を得る魔法」より転載(元記事は削除済)
読書録──『いま、殺りにゆきます』実話恐怖譚/平山夢明/英知文庫




またまたまた平山夢明の実話怖い話集。
正直、はまっている。

本書も『東京伝説 死に逝く街の怖い話』と同じく
「超」怖い話シリーズではない。
人間の狂気を主題に集められたもの。

短い話ばかりだが、今回も
特におぞましいものを中心にあらすじをいくつか。



「しつけてるんです」
気が狂った女に関する恐怖譚。
暮れ近く、外灯の下に佇む女にこんばんはと声をかけると
「「むぁい」/女は言った。/「なんか返事をしたというよりは、
こちらの<音>に対して<音>で答えた、みたいな感じでしたね」

/あ、やっぱり……あんまり馴染まない方が良いな」(p.11)
と思いながら女を後にして階段を登り、ふと振り返ると
「真後ろに女が立っていた。
/それも息と息とが触れ合う傍に」(p.11)。
わけのわからないことを呟きながらも
とりあえず女は去っていったが、
それから寝ている最中にドアが
「ほとほと……ほとほと……と叩かれ、
ドアの向こう側でこちらの気配を
窺がっている人のいる気がする」(p.13)ようになった。

そしてある夜中に<以下ネタバレにつき白字>
「聞く者に生理的嫌悪感を催させるような
怒り憎しみの入り交じった絶叫」(p.13)を耳にし、
見るとあの女が角の掲示板を殴りつけていた。

そしてふとこちらを見つけ、あわてて蒲団に潜り込んだが、
階段を駆け上がる音につづいてドアが叩かれ始める。
ものすごい勢いでドアノブがガチャガチャされ、
さらにはドアに何かを叩きつける音がし始める。

結局父親らしき男が血塗れになるまで女を殴り蹴り、
そのまま髪の毛を鷲掴みにして去っていった。
後日、鎖つきの首輪をされた女を一度だけ見かける。
鎖の先は
<以上ネタバレ>
家のほうへと伸びていた。



「峠で壊れて」
彼の運転する車が峠で事故にあい、動けない彼を残して
単身助けを求めて駐車していたバンに入りこんだ彼女は、
車内に横たわった女が絶命しているのに気づいた。

物音に驚きとっさにシートの下に隠れてしまった彼女。
戻ってきた何者かが
さらにもうひとつの死体を車内に投げこみ、
そのまま車が動き出す。

携帯メールで彼に助けを求めるが、
彼の返事は執拗にどこにいるかを問いかけるばかり。
錯乱した返事をかえす彼女に<以下ネタバレにつき白字>
突然シートの上から
「だからこの車のどこにいるんだよ! おまえ」
急停車し、転がった目の前の死体が
彼だったことに気づく。

後部ドアを全力で蹴りあけ、車道に転がり落ちたとたん、
後続の車に跳ねられて助かった。
<以上ネタバレ>
逃げた男たちはいまだに捕まっていない。



「甘噛み」
寝ているとき猫に耳たぶを噛まれ出血した。
疼痛が治らず腫れ始める。
医者にかかると<以下ネタバレにつき白字>
切開した傷口からは蛆のようなものが無数に。
猫が寄生虫の湧いた魚を食べたせいで
卵が移った
<以上ネタバレ>のではないかという。



「おまけ」
ネットオークションで落札した
ダンボール箱いっぱいのレコードの底に、
曲目も何も書かれていないカセットが。
再生すると、<以下ネタバレにつき白字>
絶望的な独白。父親と口論の末、
プレス機で計画殺人を犯したという。

「<厚さ五ミリの鉄板を打ち抜くプレスだからね、
ひとたまりもなかった。プギャッって骨の抜ける音がして、
親父は額から後頭部にかけての字で
打ち抜かれたもんね(後略)>」

そして今から死ぬとつづける。
テープは恐らく、誰にも聞かれることなくダンボールに
放り込まれた遺言。
<以上ネタバレ>



「M」
援交で“ヤバ男”に捕まった少女の顛末。
睡眠薬をもられたらしく、気づいた時は
全裸のまま手錠とロープで固定されていた。

男は医療用ゴム手袋をはめ、<以下ネタバレにつき白字>
糸を通した外科医が使う縫い針で、
淡々と少女を“刺繍”し始める。

それは巣に掛かった人を喰らおうとする蜘蛛だったという。
抜糸したものの皮膚が裂けたり緩んだりしており、
出血も止まらず元の身体には戻らなかった。
その上、頬にと縫われた部分は
糸に皮膚や組織を腐らせる薬が染み込ませてあったらしく、
少女の頬はMの字に腐食して
<以上ネタバレ>しまったという。



「蟲」
就寝後、なんの前触れもなく迷彩服の男に襲われ、
手足をくくり上げられた。ビニール袋を被せられ、
その口を首回りでテープを使って閉じられた。
生臭く温かい。

「あっと思った瞬間、<以下ネタバレにつき白字>
頬や鼻が引っ掻かれ、何かが逃げた。
/驚いて目を開けた。/唇の上に細い髪の毛のようなものが
蠢いていた。/触覚だった」(p.151)。

百匹近いゴキブリが袋の中に詰まっていたのである。
悲鳴を上げると口のなかに飛び込んでくる。

「「私、初めて知ったんですけれど……」
/高橋さんは消え入るような声で呟いた。
「ゴキブリって歯があるんですね。
私……噛まれたんです」」(p.152)。

<以上ネタバレ>意識を失い、
朝になると男の姿は消えていた。捕まっていない。



「みっくちゅじゅうちゅ」
つきあっていた彼は
目当ての仕事先に就職できないと悟ると
突然進路を大学院進学へ変更した。

結局院にも落ちてしまい、
社会人となった彼女とは生活時間がずれ始める。

少しでも一緒にいたいからと、
彼女のために食事の用意や掃除をしながら
帰宅を待つようになったが、
新入社員である彼女はおいそれと
予定通りに帰るわけにはいかないことが多く、
ふて腐れた彼をなだめるのに苦労する。

限界を感じ、いきなり別れを切り出すわけにもいかず、
部屋で待つのは止めて欲しいと頼むが
食事待ちは終わらなかった。

顔を見るのもいやになった彼女は部屋の鍵を替え、
電話で別れを告げた。

ある夜、目覚めるとナイフを彼女の頬に当てた彼がいた。
彼女が会社に洗脳されているといい
助けるためにミキサーで突然
野菜ジュースをつくり始める。

「「脳の栄養をつけて、冷静な判断ができるようにしなくちゃ。
早くこっちの世界に帰って来い! 来い!」
/彼は妙な節をつけおどけて見せた」(p.210)。

しかたなく一口だけ飲むが、彼はどんどん昂奮し始め、
蓋をしていないミキサーのスイッチを入れる。

「「愛しているよ」
/彼はにっこりと彼女に微笑むと<以下ネタバレにつき白字>
容器のなかに手を突っこんだ。
/ベキ、ビューンと異様な音がし、彼の体が揺れた。
/透明なガラス容器のなかが瞬時に赤くなると
指の名残のようなものが縁を泳いで回った。
(中略)容器のなかがジュースの残りと
血肉で赤黒い液体で満たされた。

/彼はスイッチを切った。
/手を抜くと真っ赤な肉の塊が出てきた。
残っている指は二本しかなかった。
それもまともではなくいずれも先端が欠け、
皮がずるりと剥けていた」(p.213)。

飲むのは無理と拒否するが
「「汚くないよ。手は洗ったんだ」」(p.214)

むりやり飲まされ、
吐き気を感じて容器の中身をベッドの上にぶちまける。

「容器の縁には白い皮がテープのように不着していた。
/皮には毛が生えていた。/喉の奥に
フィルムのようなものが貼り付いていて、
咳が止まらなくなった。
/やっとの思いで吐き出すと<爪>だった」(p.215)。

呆然として彼女が顔をあげると、
もうちょっとだなと彼は再び容器をセットし、
「ミックスジュースだな」
ミキサーを近づけ、彼女の腕を引っ張る。

ミキサーの刃が指輪に当たって助かったが、

<以上ネタバレ>その後彼女の実家には時折、
入院している彼から、全てひらがなで書かれた
小学生のような内容の手紙が届くという。



「あとがき~みなさん、狂ってますか?」
あとがきだが抜粋。
「思えば昔は、よほどの変人でもない限り、
人を刺したらどんな気持ちがするか試したり、
子供をボールのようにマンションから放り投げれば
自分の問題が解決するなどと考える人は
少なかったように思います。(中略)

/このままでは医師が患者を殺しまくったり。
/警官が積極的に犯罪を犯したり。
/教師が生徒を犯しまくったり……
あ、そうか、もうみんなやってますね。

/既にこの世の中は引き返せないほど
狂い果ててしまっているようです」(p.220)

それに続く結びの言葉が
「偶然にも数多ある本のなかから
本書を手にとって戴いた読者のみなさま、
いろいろと疲れ果てることの多い世の中ですが、
みなさまの憂さを一瞬でもこれらのエピソード群が
忘れさせることができましたら
著者としてこれにまさる喜びはありません。
/みなさまの末永いご健康と
ご正気をお祈り申し上げる次第であります」(p.221)



いやはや、あいかわらずの暴走っぷりというか。

この著者は、肉体的・精神的に関わらず、
とにかく胸が悪くなるような直接的な“痛み”に
耽溺しているのだろうな、と。

あとがきの最後の一文は、本書の内容が
“偶然この本を手にとっただけの”読者の鬱憤を
晴らすものであるとあえて決めつけている感もあり。

なんとも、文章の向こう側に、
意地の悪い
まとわりつくような微笑を口もとに浮かべた
編著者の顔が見えてくるような名文であります。

むろん、こんな本にくりかえし惹かれる私もまた。


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※この記事は2009年06月26日 21時11分22秒にアメブロに投稿した記事を転載したものです。
 またこちらへの転載に伴い、アメブロおよびBloggerのミラーサイトに掲載した元記事は削除いたしました。




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詳細なあらすじになる場合もあり、ネタバレもがんがんしまくりますので、あらかじめご了承願います。

一応ネタバレ部分は
<以下ネタバレ>ネタバレ部分<以上ネタバレ>
のような感じで括って中身の文字色を変えておきます。
必要に応じてドラッグ反転でお読みいただきますよう、お願いいたします。

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