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読書録──『「超」怖い話Б(ヴェー)』

アメブロ「○○を得る魔法」より転載(元記事は削除済)
読書録──『「超」怖い話Б(ヴェー)』



『「超」怖い話А(アー)』に続く
平山節炸裂の“実話”集成。
 これをもとにした実写作品も
以前Gyao!で観た。

本書中の「首団子」を
シリーズの中核にすえて、
平山流の、えぐるような痛さ全開で撮られた秀作で
私はかなり気に入ったのだが、
やっぱりレビュー欄は
ぼろくそけなしてる意見ばかりが
目立っていた記憶がある。

処刑画と呼ばれる掛け軸を購入してきた父のせいで
家族にたいへんな災難がふりかかる──
というのが本書中の「首団子」。
映画はこの話をもとに、
幼いころ掛け軸の怪異にとりつかれて
“一線をこえてしまった”ある男が、
恐怖への耽溺のあまり
怪異譚を異常な執念をもって蒐集し、
ついには自らの娘を殺害するという
体裁で軸を通されていた。


物語前半は、
男が怪異を求めてあちこちの語り手たちを訪れるという形で、
オーソドックスな短編集成のおもむきがあったが
それも最初のうちだけ。

男の娘のほうもまた
二重人格とも幻覚ともつかぬ存在にとりつかれており、
母親は母親で近隣からは異常者としか思われていない娘と
狂気一歩手前で恐怖に耽溺する夫とのあいだで均衡を崩し、
物語中盤で自殺をとげてしまうという、
なんとも陰惨なつくりであった。

最終的に、
父親が最上の恐怖を味わうためだけに設けられた
と告げられる娘は惨殺され、
父親もまた狂気のあげく──という、
あまりの陰惨さのオンパレードのために
かえって恐怖自体がだれ気味の終盤部から、
とってつけたようなハッピーエンドへとつながるのだが、
このあたりは何かのまちがいだろう。

以前も書いたと思うが、
本書は実話集の体裁をとっているものの、
平山夢明独特の毒々しさが濃密に
でろでろと汚泥のようにたゆたっている。

webで怪異譚を募集しているらしいし、
フィクションというわけでもないのかもしれない。
どちらかというと“その手の”話が、
平山夢明という特異な個性に向けて、
引力にひかれるように集まってきてしまっているのが
本シリーズの正体なのかもしれない。



特徴といえるものもある程度はつかめてきた。

まず、この編著者の好む怪異譚は“痛い”。

「首団子」でいえば、
処刑された首を記録として絵師が残した“処刑画”などという、
ただでさえむごたらしい内容の掛け軸が、
それだけではあきたらず、
通常のさらし首ですらなく三つの首が団子のように盛られた上、
嬲られたように切り刻まれた首からは脳漿が、
顔もじゃくじゃくに
(そもそも「じゃくじゃく」などという表現方法自体が
またすさまじいじゃないか)されていた、とか。

その掛け軸のせいで母親のみた悪夢の内容がまた
「簡単に説明すると、はちきれんばかりに腹が膨らみ、
悶絶するような苦しみに耐えながら首を生み続ける」(p.13)
というこれまた凄惨な内容で
その挙句できていた子どもも流産。

父親も悪夢を見て、その内容がこれまた
「目の前に座った侍が
凄まじい表情で自分を怒鳴り散らしている光景」(p.13)
で、さらにはその侍が夢のなかの自分に向けて
何かをぶつけてくる。

最初は泥のようなものと思っていたが、
夢を見続けているうちに鮮明になってくるのが
「侍は切腹した腹の中に手を突っ込むと、
自身で引きずり出した臓物を
お父さんに向かって投げつけてきていたのだ」(p.13-14)



「柱」という一編は、
家の柱の表面の、優しい男の人に見える瘤に
接吻をする少女の話。
彼女の成長に<以下ネタバレにつき白字>
合わせるように、瘤の位置も移動していき、
高校二年の春に
父親の転勤で家を離れるまでそれは続いた。

結婚することになって荷物を整理するために
ひさしぶりに実家を訪れた彼女は、
瘤のあった場所に
穴がぽっかりと開いているのを目にする──
とこれだけならちょっといい感じの怪異譚だが
「周囲は溶け腐ったように崩れていた」(p.26)

<以上ネタバレ>の一文できわめてイヤな感じに。




「予感」の場合も夢。
河を渡れと、向こう岸の“自分”に
呼ばれる夢を見続けてきた彼が大学受験に失敗した夜、
心無い父親の一言に背中を押されて“河を渡った”。
腰まで水に浸かってしまい、
その水に全身を浸す気にはなれずに
「もう行けない」と叫んで一命をとりとめる──
ここで終わればふつうの臨死体験談だが、
河向こうの男が舌打ちとともに手にしたランプを
彼に向かって投げつけたとたん<以下ネタバレにつき白字>
「それは彼のすぐ手前の水に突き刺り、
たちまち周りの水を凍らせた。
/彼はとっさに両手を河から抜いた。
腰から下だけ感覚が失われていった。
それはまるで貨車がゆっくりと切り離されていくように
身体の中から離れていった。
/河は氷河と化し、
彼はやってきた側へと上半身ごと
滑るように引き戻された」(p.101)。

で、目が覚めると半身不随になっていた。
「徐々に堆積していた化膿菌がついに脊髄を

<以上ネタバレ>侵食したのだ」(p.101)




次の特徴。追われる。イヤなものに。

「座る人」はマンションの
エレベーターを降りる瞬間に足を掴まれる。
エレベーターの床から生えたしわくちゃの手に。

いつか玄関ホールの階段に座っていた
不気味な老婆を思い出す。
わめきながら足を動かすたびに、
少しずつ手の向こう側が出てくるように見える……。



「プリペイド・マンション」。
同じくエレベーターの怪異譚で、
深夜乗ったら隅に靴が置いてあった。
蹴ってみると、<以下ネタバレにつき白字>
重い。まるでだれかが履いているように。
バランスを崩して手を付くと、
何者かの声と同時に、掌に人の感触。

そして靴はゆっくりと彼女に向きを変える。
ドアが開いた瞬間に飛び出し、部屋に飛び込む瞬間──
「エレベーターから靴が降りて
<以上ネタバレ>
きているのが見えた」(p.52)



「ブランド」では、
ネットオークションで落札した格安のスーツに
憑いていたものが真夜中に姿を表す。

深酔いして眠った深夜、
いつも夜中にしていた異音に目を覚ました彼女は
正体を見極めるために、音の源であるクローゼットを開く。
服の間に<以下ネタバレにつき白字>
女の首。思わずうめきを上げると
「その瞬間、動きが止まり、サッと顔が上がった。
/充血した目玉がぐるぐる狂ったように回転していた」(p.131)。
逃げ出し、翌日昼過ぎに帰宅すると、
あけっぱなしのクローゼットの中に、
あのブランドのスーツだけが落ちていた。
「右袖を上げ、左袖が下がっていた。
まるで人が這った
<以上ネタバレ>ように見えた」(p.131)




 さらにもうひとつ。これだけ陰惨な内容なのに、
奇妙なことにからりと明るい。
明るいというとおかしいが、
なんというか、妙にあっけらかんとしているのである。


たとえば「予約席」。
ルーマニアで冬の海に落ちて心肺停止で死んだ男が、
葬儀の最中に息を吹き返す。
だが以来男は生気をなくし
まともな受け答えもしなくなってしまう。

話の語り手は
そんな『死んだ男』が出入りするラウンジで、
バーテンを介して話しかける。
男はバーテンに向かって<以下ネタバレにつき白字>
「槍で死ぬ」と告げ、
語り手に向かっては「あなたは木の靴で死にます」(p.85)。

その後、再び訪れたラウンジにあのバーテンの姿はなく、
橋から落ちて死んだときかされる。
溺死ではなく出血多量。
「落ちた奴はその柵に付いている泥除けに串刺し。
日が完全に昇りきるまで誰にも見つけてもらえなかった」(p.86)。

ここで終われば、死の予感を残したふつうの怪談だが、
最後に添えられる。
「「それにしても木の靴ってなんだ」
/「ユメ。俺の将来の夢はアジアに住むことだ。たぶん……下駄だろう」
/「撲殺だな」/「良い感じだ。
誰か知らんが返り討ちにしてやる」
<以上ネタバレ>


「ひとめぼれ」では神社の鬼の像が
ブルース・リーに似ているからと、
かっぱらってしまった男が語り手だ。
案の定、数々の怪異に遭遇しひどい目に会うのだが、
語り手はまったく懲りていない。


「排水口」は、物がよく落ちる部屋に住む女性が主人公。
「家電がよく壊れ、
深夜、誰もいないバスタブで水音が聞こえる」(p.125)し、
「「よく考えたら、寝ているときいつも誰かがカーペットの上を
歩き回っていたかもしんない」」(p.125)部屋であるにも関わらず、
彼女はそういう怪異を
あまり気にしていないとあっけらかんと口にする。


「節約」という一編では、
拾ってきた消してあるテレビのブラウン管の鏡面に映る室内に、
その場にはいるはずのない
「白いシャツを着た母子」(p.136)がいるのが見えた。
怖気づいたものの、粗大ゴミの収集日は翌月。
電気屋に金を払って引き取ってもらう気にはなれず、
「このまま捨てるのはもったいないからと、
<以下ネタバレにつき白字>
テレビを解体」(p.137)したら、
内部には髪の毛がびっしり。
しかもあろうことか、髪の毛を取り除いたあとに御札を貼っただけで、
そのテレビを彼は今でも使っているという。
「チラチラし始めたら新聞紙かけて寝る」からと。
使えるのに捨てるのはもったいない

<以上ネタバレ>というわけだ。


「干瓢」では遺骨欲しさに
富士の樹海に繰り返し出かける男。

遺骨が欲しいというのも尋常の感覚ではないが、
それを蒐集するために仲間を募って
わざわざ樹海に出かける神経がすさまじい。

むろん、目的は自殺者の“遺骨”だ。

都合九回も敢行したのだが、
その最後の九回めで『ブレアウィッチ・プロジェクト』
ばりの怪異に遭遇する。

なにしろ樹海の中で自殺者の痕跡を見つけて
その場でテントを張って夜を過ごすという
常軌の逸しかた。

怪異に遭遇した時も、恐怖よりは、
<以下ネタバレにつき白字>
同道した連れが「狂うぐらいなら問題ないが、
死なれては困る」ことを懸念している人非人ぶりだ。

あげく、同行者は翌朝、風鈴のように
自殺者がぶらさがる樹の下の空き地で、
胸の下辺りまで埋まって大声を張り上げていたという、
あまりにも壮絶な場面にいきあたるのだが──
樹海参りを辞めたのはその怪異が原因ではない。

ふたりが設営したテントの下に
心中遺体が埋まっているのを撤収作業中に発見し
「頭蓋だけリュックに入れて持ってきた」(p.225)のである。
願いが叶ったから樹海に行く必要もなくなった、
というわけで「一度にふたり分なんて

<以上ネタバレ>きっと運が良かったんだと彼は呟いた」(p.225)



平山夢明自身も、この話に通底する能天気さがある。
やはりGyao!で配信されていた
『ドキュメント「超」怖い話』では、
平山自身が富士の樹海に取材に出かけるのだが、
いい歳したおっさんが、
まるっきり“呪われた場所”にノリで出かけて
祟られて帰ってくる学生そのもの。

罰当たりという言葉など
まったくどこ吹く風といった感じだ。
もっともドキュメントの「沖縄編」では、
“本当に”ヤバいスポットは避けている節もあったので、
もしかすると異常に勘が鋭い人物なのかもしれない。



追記。本書はブックオフで購入したものだが──
同じようなタイトルのものがたくさん並んでいるせいで、
買って家に帰ったら全く同じ一冊が
未読の山の中から出てきたという、
実に情けない事態に陥った。

古本で105円てのは、特に安いともいえないし、
何より同じ本が2冊あっても。


amazonリンク


※この記事は2009年05月31日 22時54分33秒にアメブロに投稿した記事を転載したものです。
 またこちらへの転載に伴い、アメブロおよびBloggerのミラーサイトに掲載した元記事は削除いたしました。


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詳細なあらすじになる場合もあり、ネタバレもがんがんしまくりますので、あらかじめご了承願います。

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必要に応じてドラッグ反転でお読みいただきますよう、お願いいたします。

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